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会長挨拶(2021)

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新年(2021年)のご挨拶

 2021年、明けましておめでとうございます。
今年は例年と異なり、感染拡大が続いておりますコロナ禍の中、ステイホームでご家族の皆さんと逢うことも叶わず、かつて経験したことのない静かなお正月を迎えられたことと拝察致します。
 各支部の忘年会、新年会も3密を避け感染防止のため中止とさせて頂き、楽しみにしておられた方々には大変申し訳なく、深くお詫びを申し上げます。
 先般もホームページにて皆さんにお知らせしましたが、本校は、平成29年(2017年)に高専創立50周年を迎えました。又、今年は、本校の創基120周年の記念すべき年となります。本校の栄光ある足跡を回顧し、皆様方と喜びを分かち合いますと共に、母校の輝かしい将来の展望とその実現を期するため、本年、2021年11月5日、本校にて記念式典を開催することに致しました。
 この度は、特別な企画として、「旧校歌」、「練習船の歌」から「ダンチョネ節」に至るまで、プロの歌い手さんによる25曲の幅広い楽曲を収録した弓削商船、船歌集DVDを記念品としてお届けする予定にしておりますので、寮生活での想い出、又、練習船での楽しかったこと等、当時のことを懐かしく脳裏に浮かべながら、ノスタルジアに浸って頂けるものと思っております。
 就きましては、本記念事業の所期の目的が達成出来ますよう、同窓生の皆様方にはご理解とご協力をお願い申し上げます。
 最近、文科省、国交省で今後の商船教育の在り方について議論されております。ご承知のように、大手海運会社が提唱した新3級制度(入社した大卒の優秀な社員を自社教育し、海技免状を取得させ士官として乗船させる)は実行に移され、既に、本制度による船長が誕生しております。又、これとは別に一般の大卒の学生を海技大学校で教育し、士官として乗船させる新々3級制度を関係省庁へ立案し、協議が始まっております。海技大学校創立の目的は、部員の方々にも門戸を開き、長年船の経験を積んだ人達が、海技免状を取得する為の教育を受け、士官として乗船勤務するというものでした。卒業した人達は現場を熟知しており、問題なく仕事をこなすことが出来ました。
 一方、新々3級は、僅か数年の教育期間なので船がどのようなものであるか頭では解っていても体得するのは困難であり、船舶にとっての最重要課題である安全運航が成就できるか大いに疑問が残るところです。
 業界はすそ野が広く、大手船社のみが船会社ではなく、業界を縁の下で支えている多数の中小船社がいることも忘れてはなりません。
 船員教育制度を大手海運会社の主導で論議するのは、中小船社をなおざりにし、人材の豊富な大会社のみのシステムに適合する制度であり、先輩諸氏が百数十年に亘って試行錯誤の末、築き上げてこられた日本の国に合致した素晴らしい商船教育制度を覆すものではないかと憂慮しております。
我が国の教育は、誰もが平等に受けられる制度でなければならず、又、教育を受けた学生が、一部の船社だけではなく、中小の船社にも充分に行きわたるような公平な制度でなくてはならないと思っております。
 弓削商船は、中学を卒業し、船員になるとの熱き志を持った純粋無垢な学生を5年半の長きに亘って教育し、船乗りとはどうあるべきかの基本を頭ではなく身体で覚えさせ、陸とは全く隔離された海上での特殊な環境の中、想像を絶する困難、苦難に遭遇しても、荷主様から預かった大切な荷物を事故なく目的地まで安全に届けるノウハウを習得した真の船乗りとして、世界の海で活躍する人材を育成できる学校であると確信しております。
 一方、新々3級制度は、海大卒業後、数年間自社船に乗せ、現場を体験してもらい、陸上の社員として雇用するのが目的で、真に船員を養成するための制度ではなく、本来の船員教育からは大きく逸脱した制度であるように見受けられます。本件に関しては、商船教育の根幹に関わる問題と認識し、やがては商船高専の存在をも揺るがす誤った方向に向かって行くのではないかと大変危惧しており、全船協と共に対応を協議して行かなければならないと考えております。
 本校は、高専機構の言う、高専は、地域と一体となり地元産業に貢献する教育機関でなくてはならないとの趣旨に適合した、海事都市今治のクラスターの一員として、地元の海事産業に貢献できる唯一の商船学校である認識しております。
 今年も昨年に続き、新型コロナウィールスへの対応で大変不自由な生活を強いられるかと思いますが、感染対策には充分留意され、皆様方がご家族と共に健康で平穏な一年を過ごされますよう心から祈念し、新年の挨拶に代えさせて頂きます。

令和3年元旦
弓削商船高等専門学校
同窓会長 柏 木 実

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